受援力

 

「受援力」

森田明夫

1/12(日)NHKラジオのアサいちのマイボイスで東大の上野千鶴子さんが「受援力」の話をしていた。聞きなれない言葉だが、援助を受ける力(能力・コツのようなもの)のことである。介護とか福祉だけのことではなく、人生一般に必要なコンセプトだ。特に医療に関係のある介護の領域では、介護をする人はその道のプロであるが、介護を受ける人はもちろん誰もが初心者である。介護を受ける人にもそのされ方をコーチングし、心得てもらう必要があると言うのである。

上野千鶴子さんは、平成31年に東京大学の入学式で祝辞が話題となった東大教授で、フェミニズムや「お一人様」の生き方などについて色々な本を書かれている。

さてその中で昔書かれた本「おひとり様の老後」という本で「介護される側の心得10か条」と言うのを書かれているそうである。その中のいくつかを紹介されていた。挙げられていたのは、

1.      自分にできることと自分にできないことの境界をわきまえる

2.      不必要な我慢や遠慮をしない

3.      何が気持ちよくて何が気持ち悪いかをはっきりと相手に伝える

4.      嬉しいこと、助かることをされたら喜びを素直に表現し、相手を褒める

5.      介護者の馴れ馴れしい言葉づかいや、子供扱いを拒否する

6.      介護してくれる相手に過剰な期待や依存をしない

7.      ユーモアと感謝を忘れない

患者を診る側としてもとても参考になるリストである。自分の思うことや、感じることをはっきりと言ってもらうこと。特に患者さんたちに馴れ馴れしい言葉づかいや、認知症の高齢者に子供あつかいするのは絶対に避けるべきだと思う。もちろん自分が患者になった時も忘れないようにと思う。

ちなみに書籍からの追加項目は下記の3つです。

1. 自分ココロとカラダの感覚に忠実かつ敏感になる

2.  相手が受け入れやすい言い方を選ぶ

3. 報酬は正規の料金で決済し、チップやモノを与えない

である!

 

「障害者にとって自立とは、依存先の分散である」という言葉の紹介もあった。だれか特定の人や個人に依存してしまうと、その依存された人の負担が大きく、また頼る方も精神的な依存度も高くなってしまう。多くの人に、細かく依存をすることで、一人一人への依存度は低くなり、障害者も気持ちが軽くなるというのである。そのためにはそうできる社会を作っていかないとならないと感じる。

 

そして最も「受援力」のない人たちは高齢男性だそうである。特に男性は自分が困っていることや弱っていることを言い出せない。また奥さんに日常からかなり頼り切っているのに(家事とか料理とか、奥さんがするのが当たり前だと思っている)、頼っていることに気づいていない。自分は誰にも頼っていないと思い込んでいるそうである。

高齢男性が、一人になった時、「僕寂しんです。」と言えるようになることが大事だそうである。

高齢女性にとってはお一人様よりもお二人様でいることの方が生命リスクが高いそうである。奥さんが弱ってしまっても、ご主人が「デイケアなんて行く必要ない」とか言ってしまうそうである。なので、女性はおひとり様の方が長生きできるそうである。「男は黙ってサッポロビール」なんて困ったものです。奥さんへの日頃の感謝を忘れないようにしましょう。

 

雑談:

年末に和歌山に行ってきました。和歌山には、これまで学会で2回、旅行で子供の頃と、熊野古道が世界遺産登録された頃に行ったことがありました。みなさん和歌山っていうと何を思い浮かべるでしょうか?みかんと梅干しでしょうか?歴史の好きな人であれば、紀州藩のこと(和歌山城はとても立派なお城です)。徳川吉宗のこと。和歌山の名前の元となった、和歌の浦のこと(元々は若の浦とよなれていましたが、よく和歌が読まれたことからそうなったと言われます)。秀吉が城を築いた際に海側に和歌の浦があるので和歌山と呼んだそうである。外科医であれば、その元祖といわれる華岡青洲が活躍した地でもある。小説が好きであれば、「紀の川」と言う有吉佐和子の自伝的小説があります。雄大な紀の川が吉野から流れています。そして奈良との県境近くには高野山があります。比叡山と並ぶ日本の仏教の2大本山です。比叡山ほどアクセスが良くないので、おとづれたことがある人は少ないようです。私も今回初めてその一部(全部回るにはまる二日くらい必要です)をお参りました。和歌山は大阪から1時間特急でかかります。ちょっと時間がかかるのですが、和歌山も大きな都市ではなく、とても自然が豊富なところです。星空がとても綺麗です。めはり寿司とかクエとか、食べ物もとても美味しいので、機会があれば行ってみてください。ところで「秘密のケンミンショー」では取り上げられたことが最も少ない県の一つ(最下位は神奈川県)で、今ひとつ発信力が少ないようです。そういえば、今国内の観光地はどこでもいっぱいの外国人も、和歌山にはほとんどいませんでした。 

 

写真:

丹生都比売神社 高野山の麓の天野という集落にある世界遺産の一つの神社です。もともと高野山一帯はこの神社の境内で、空海がこの神社の許しを得て高野山を開いたと言われています。奥には修験者の祠や石碑などがあります。

 


 

高野山・紀伊の内陸の朝はとても冷えます。夜は星がものすごく綺麗です。

麓から40分くらい葛折の道を登ると高野山の一帯に到達します。大門に迎えられ壇上伽藍、金剛峯寺、奥之院へと続きます。今回は前半のみで、後半は宿坊に泊まってお邪魔しようと思います。高野山まで登ると一面雪で、堂の中はとても冷たいです。

 


 

このブログの人気の投稿

福島孝徳先生を偲ぶ:再会を期待して!

2024年4月 桜と日本人

春の散歩:ハルジオンとヒメジョオン