中国・深圳で学会があり2泊3日の弾丸ですが出席してきました。懐かしい面々や師匠にも会うことができ、楽しい時間を過ごしました。深圳は以前10年ほど前に香港開催の学会で、越境が必要ですが、30分くらいの距離なので、一部のセッションが深圳であったので、訪れたことがありました。ちょうど香港と深圳は東京と横浜くらいの関係です。ただ深圳は10年前もすごいビルが立っているなと思ったのですが、その記憶を遥かに凌駕する高層ビルが所狭しとガンガン立ち並んでいます。人口は東京都よりやや多い1800万人くらいだそうですが、すごい勢いで拡張し続けています。以前は香港があまり共産党に支配されておらず、深圳はそれと近接した特区という位置付けでしたが、今では香港を凌ぐサイズのメガシティーになっています。ホテルから街の中心の市民広場まで高速で30分くらいかかります。東京で言えば、都心と府中くらいまでびっしりと高層ビルが立ち並んでいるという状況でしょうか?40年前は1漁村に過ぎなかったとお聞きします。今回学会主催のハノーバーの国際脳神経科学財団(INI: International Neuroscience Institute)の出前施設が15年ほど前にこの街にできたのですが、その頃は周囲はジャングルだったとのこと。今は超近代的なビルや商業施設が立ち並んでいます。それでも深圳にはうまく昔のままの森林も残しており、至るところに公園があります。Spiderとか毒蛇注意のwarningが掲示してあるそうです。通りかかった公園では子供大人を含めたたくさんの市民がシャベルやスコップを持って土地を耕して花畑を作っているところでした。大きな交差点の角には必ず季節の花が植えられています。大気汚染も中国一少ないそうです。再生エネルギーを中心とした施策を徹底しているそうです。
学会では欧米や私ども含めた発表に混じって中国の中堅の先生方が発表されるのですが、やや発表はぶっきらぼうなもののその内容はすごく手慣れた手術です。10〜20年くらい前は日本は中国の先生たちに脳神経外科を教えた立場だったのですが、今やすごい手術をするな、、とあっけに取られるばかりです。ものすごいバイパス術(血管吻合)の技術、そしてすごく困難な巨大な下垂体腫瘍を内視鏡を様々なアプローチを駆使して摘出します。海綿静脈洞の中の腫瘍に埋まったクリノイド靭帯という組織をさも普通に(私は内視鏡下では見たことはありません・通常の開頭の逆になります)切断しないといけない、、と発言していました。大御所もたくさんいましたが、会場の何%の人があの手術を理解できるのだろうと思いました。手術数も日本の施設での数と比較すると天文学的です。さらに摘出した組織は国家の予算を使って全て凍結し、将来の研究に活かすようDEEP FREEZERで保管しているそうです。日本では国家プロジェクトで脳卒中患者の血液などが保存されたことがありますが、研究費が途絶え、今は保存だけになって、新しい集積は行なっていません。それが何に役に立つのかわからなくても、予算が出て未来の研究の資材が貯留されるのは大変羨ましい環境です。
さて、帰国の日に午前中市内を少しぶらついてみました。巨大な市民広場があり、DiDiというアプリを用いて車を呼んで(中国版Uber, GOみたいなもの)30分くらい飛ばしてつきました。前情報なしで行ったのですが、何せ広い!3時間のブラブラで13000歩でした。週末の夜にはこの広場で日に3回くらい30分の光の共演があるそうです。周囲の高層ビル全体と市民広場の巨大な船状の建物が光で同調して煌めくそうです。私は夜間にここまでくる勇気がなくて見損ないました。北側には公園があり花の祭りのようなことをしていました。傍に素敵なガラス張りの建物が二つ並んでいたので、何かと思ったらコンサートホールと図書館とのことでした。コンサートホールは入れなかったのですが、図書館は入ることができました。中は5階くらいになっています。広々とした素敵な雰囲気だなと感嘆していたら、土曜日午前10時ですが、全ての机と椅子がびっしりと中高生くらいの学生さんで埋まっていました。衝撃でした。静かにカリカリペンを動かし、パソコンをたたいています。中国の受験戦線は東大が楽に入れるくらい大変だと聞いていますが、そのために勉強しているのかと思います。ものすごい真剣さの「気」に圧倒されました。何しろ皆ががむしゃらだな、と感じました。こんな熱気に満ちた図書館は東大や日本医大を含めて、日本では入ったことがありません。また日本では図書館では勉強する場というよりリラックスして本を読む場といった雰囲気なのではないかと思いますが、全く使用目的が異なるのかなとも思いました。
中国とは現在、高市総理の発言をきっかけとした在日大使の失礼な発言など緊張が高まっていますが、日本ではいまだに中国は未開の国、やや遅れた国といった印象があるのかもしれませんが、全くの誤りです。日本はすっかり前に学問のレベル、人の努力、そして社会の合理化という面では追い越されていると感じます。さらに、なにしろこんなすごい発展を遂げているのに人々がいまだにがむしゃらで、目一杯努力し続けています。日本では日本の学問のていたらく・レベルの低下など嘆いて批判する評論家がいますが、あの心がヒリヒリするような真剣さは今の日本のどこに行っても(もちろん図書館でも)経験したことはありません。かつてもそのような時期はあったのでしょうか?真剣さと最大の努力の程度が足りないのかと思います。
海外の先生たちと話をすると、皆さん「日本は良い国だ。礼儀も正しいし、清潔、ご飯もすごく美味しい。」とすごく褒めてもらえます。一瞬誇らしい気持ちもしますが、一方で、いつまでこのような状況を保てるのだろうか?と不安にもなります。
今のような、優しい、そして律儀な国民性を保つためにも、経済的また心理的余裕が必要です。それを保つためには、相反する心構えと思われるかもしれませんが、我々のこの国民性の中に、もう少しがむしゃらな頑張りも必要なのではないかと思った出張でした。
雑談:
大谷、山本、佐々木選手らの活躍もありドジャースがまたWorld Seriesの覇者になりました。最終戦もすごい熱戦でした。日本人の誰もが誇らしく、喜んだ瞬間ではなかったかと思います。でも私たち国民はただテレビやPCの前に座って、祈っていただけですが、あの3名が(ダルビッシュ、菊池、吉田、売野選手たち等も)世界の第一線で活躍するための最大の努力をしていることをもう少しテレビなどで広めてほしいと思います。成績や結果だけではなくて、そこに至る過程のもの凄さを知ることで、次の世代が伸びてゆく、日本がさらに発展できるきっかけになってゆくのではないかと思います。
今回の料理は今日本でも人気が出てきている麻辣湯です。深圳空港のFood courtは中国食の宝庫です。麻辣湯の専門的の前には大きな食品棚があって、様々な麺や豆腐、肉団子、カエルの脚も含む多種多様なお肉、野菜、きのこ、青菜は10種くらい並べてあって、それを適当にお盆に盛って渡すと、辛さを聞かれます。もちろん激辛選択ですが、5分ほどして洗面器のような器に真っ赤に色づいた肉や野菜がたっぷりの春雨(を選びました)が盛られています。とてもおいヒ〜〜〜です。60元 1300円くらいでした。
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