産業医講習・集中講座を受講して

 

産業医講習を受講して               森田明夫

12/8~13まで1週間お休みをいただいて日本医師会・産業医科大学主催の産業医集中講座を受講してきました。産業医という括りは、さまざまな物理的・化学的・生物学的・そして社会心理的要因による労働災害が多発する中、1972年にそのような災害を減じ予防するために労働安全衛生という法律が施行されるにあたり、その中心的役割を果たすための医師を生み出すために作られたものです。産業医科大学そのものが1978年創学ですので、私が大学に在学中に出来上がったシステムで、私たちが医学生の時代には、さまざまな公害病がありましたので、労働が病気の原因となることはある程度は知っていましたが、事件的な事象ということだけであって体系的な学問としての領域ではありませんでした。今回私自身労災病院という、その労働災害の中心を担うべき病院の管理者になっておりますので、なんとかこの領域の知識を得ておこうと、以前から何度か週末の講習会や集中講座なども申し込んではいたのですが、なかなか人気が高い講座で参加することができずにいました。今回やっと念願かなったわけです。

月曜日から土曜日まで一日9時から19時までのお昼の40分を除く9時間の講習(6日で50時間)で、講習中スマホ、PCを開いてはいけないという厳しい掟があり、実習の運動講習以外は体を動かすこともあまりできないので、なかなか大変なものです。こんなに集中してお勉強づけになったのは小学校の四谷大塚の講習以来でしょうか? 

講師の先生は産業医大のさまざまな領域の教授、産業医大で日本中の代表的企業や機関、行政などで産業医などを務めていらっしゃる先生方で、法律に基づいた規制やその対応、実践に即した考え方や対応など、すぐに使える知識の数々でした。

内容は、多岐にわたります。上記したように労働からくる災害には物理的なもの、化学的なもの、生物学的なもの、社会心理学的要因があって、その対策ととして第一はそのような要因をなくす(減ずる)ための作業環境管理、それから個々の対応による作業管理、予防的な日常生活管理となる健康管理、労働衛生教育、と法的にきめられている施設における衛生委員会開催などの統括管理(3管理・5管理)をおこなうというものです。その管理の方法やその背景となる現状と意義について細かく学びます。このような医学分野が構築された歴史的な背景や、石綿や化学物質の蓄積によるがんの発生には数10年かかるものもあるため、記録を30〜40年保管しなければいけないこと。労災には過剰労働と心理的要因によるという科学的背景やその評価基準、そして特に最近大事なメンタルな労災を減ずるために行うべき職場環境改善の方法の考え方などを学びます。(WHOメンタルヘルスガイドライン)メンタル障害の労災申請は年間3000件を超え、労災認定も昨年1000件を超えて鰻登り状態です。一方で身体障害の認定は年間600件くらいで、最も多いのは腰痛だそうです。私たちが知っている以上の多くの化学物質による多くの災害があったこと、その防止のために必要なリスクアセスメント方法やその元となる情報の得かた、サイトの情報などもいただきました (niteケミサポ)。またここ数年すごく増えている熱中症に対する対応や注意点などもしっかり学ぶことができました。さらに医療現場では当たり前となっている夜勤や交代勤務の課題と対策なども学びます。

その他、OSHMS(職場安全マネジメントシステム)の構築方法、KYTや指差呼称の有用性、ヒヤリハット活動訓練などの重要性(厚労省職場のあんぜんサイト)、職場で行っているストレスチェックの役割とその評価、活用方法、面談の仕方、職場巡視の意義や、保護具の使用法など、即今週から活用できそうな知識も満載でした。

たった1週間でしたが、少し自分の中で、物の見方が変わることのできた1週間であったように思います。知識は活用しなければ、知識のままですが、これらを生かすために日々の病院その他での活動に生かしてゆき、また周囲の同僚にも経験を伝えたいと思います。また今回のテキストもすごいのですが、厚労省やWHO、労災病院の本部である労働者健康安全機構の情報ページにはものすごい量の情報が溢れていること今回知りました。こちらも周知しまた活用してゆきたいと思います。

雑談:

今回上記の講習会はつくば国際会議場という筑波学園都市にある会場で行われました。

これまで何度か学会でつくばにはきたことがあったのですが、1週間泊り込みは初めてで、夜と朝には町中さまざま歩き回ってみました。将来の移住先を探しているということもあります。東京からエクスプレスで1時間という利便性もさることながら、とても街が広々としていて、公園や散歩道もそこかしこに確保されており、とても良いところです。もちろん茨城は蓮根(泥付きのを箱で買ってきました!)を始めとする野菜や鶏肉、牛肉、アンコウなどの海産物など農水産物も豊富で、食べ物もとても美味しいです。知識階級が多いためか洒落たレストランもあり、普通のモールのイタリアンレストランでもトリッパもパスタもキジ(ジビエ)のソテーも美味しいし、お隣でお話しされている中年女性陣も非常にレベルの高いお話しを(前の農水大臣と今の農水大臣の違いとか、、追っかけみたいなお話しも含め)されていました。医療機関も筑波大学、筑波医療センターが隣合わせであり、高齢者でも問題はなさそうです。土地はあるのかというと駅から10分ほど歩いたところには広大な農地があり家や開発が進められていました。まだまだまにあいそうです。ちょっと難点を言えば、6時ではまだ暗いのと、食事も夜間なのですが、街灯がまだ少なく道が暗いというのは危ないな、、、と思いました。でも私は筑波大学とはあまり関係ないので、職場がないですね。。地方への移住は、今後さらに候補を考えます。

 

今回の時間割と学んだ(はずの)項目:

 筑波にて