脳とAI
東京労災病院 森田明夫
今月もDX関係のお話の続きになります。あまり先進的なことを知らずちょっとしかかじったことのない自分が文章を書くのもおこがましいのですが、今思っていることを書かせていただきたいと思います。先日昨年に引き続き大森第一中学校の70余名の3年生卒業生のみなさんに1時間弱講演をさせていただきました。昨年のタイトルは「脳・夢、そしてSerendipity!」 今年は「脳とAI:人生と未来の楽しみ方」というタイトルにしました。なにしろ最近の話題、学会や日本医学会の雑誌編集者会議でも話題の中心は「AIをどう扱うか?」がまず最初のテーマとなっています。タクシーに乗っても、AIでいかに業務を簡潔にスピーディーに済ますかなんていう宣伝が非常に多いですね。先日私の漫画出版の話を紹介しましたが、AIのすごく得意な私の同僚が、「こんなのはAI に書かせればあっという間に作りますよ!」と切って捨てられました。何か数十年の構想と、1年間かけた努力が何か崩れ去ったようなショックを受けました。そのように今AIは様々な人たちの時間と努力の結晶を一瞬にしてボロボロにしてしまうような力、破壊力があることは認識しないといけないと思います。特に絵や文章などは、AIがかなり得意とする分野になりますね。ものまねにすぎない。。とも言えますが。便利なので講演内容などをわかりやすくするためにAIに色々な絵を描いてもらっているのですが、今ひとつオリジナリティーとか感動はない感じがします。そう感じるのは私だけでしょうか?以前もお示ししましたがAIに描いてもらった絵を後に何枚か紹介します。
先日Strokeの学会で近畿大学医学部皮膚科のAIで論文を書きまくっている大塚先生が『医師が必要な生成AIの使い方全部教えちゃいます』という講演され、ものすごいスピードで様々な生成AIアプリの特徴と活かしかたをお話されていました。その最後に仰っていられたのは、「生成AIを使えば使うほど人はバカになる!」という言葉と、「生成AIを活用するには人が中心にならないといけない」ということでした。
以上で今回のほとんどのお話は終わりですが、私なりの考えを少し書かせていただきます。
学生さんたちにはまずAIが出してくれたこの世代に投げかけると良い質問をさせてもらいました。「もし100億円あったら何をしますか?」多くの子が旅行、家を建てる、そして会社を救う、そしてMUSTは困っている人を救う(ウクライナを救う)などでした。
そして「もし失敗しないとわかっていたら、何をしますか?」という質問には考えてもらって最後に聞いたのですが、「好きな職業を見つけて、それに就きたい」という答えでした。まだ何をしたいか決まっていない世代ですね。でも未知の未来があって羨ましいと思いました。さて自分だったらどう答えるべきか、、を実際にAIに聞いてみたら、森田先生の場合には、教育とか、手術を極めるとか、一方で料理を本格的にされるのはどうですか?と推薦してきました。以前Bistro Moritaの絵を描いてもらったのをAIが覚えているのです。それと最後に、この質問は実際には「自分は本当は一体何をしたいのか?」という問いであることを示していました。
さて講義の続きですが、人の脳が何をしているかを脳外科の手術も少し見せながら、説明して、人の脳がもっともAIと違うことを次のように挙げました。これは欠点かと思われるかもしれませんが、利点なのかもしれません。1️⃣人の脳が何かを覚えたり、考えたり、見つけたりするには時間がかかること。2️⃣人の脳は疲れ易いこと。です。AIは一瞬にして、数千〜数万の情報を検索してしまい、その中から正しいと考えられる解を見つけてくれます。記憶も世界に溢れているものすごい数の事象を覚えていて、引き出せます。すごい大量の電気を使いますが、エネルギーが持つ間は疲れることはありません。このようなスピードや疲れ知らずに人間がついてゆくことはできません。以前「3**という時間の重要さ」というお話をこのブログや雑誌に書かせていただきました。三日坊主という言葉、石の上にも3年という言葉。何かをしっかりやるには3**という時間を過ごさないと駄目だという昔の人たちの教えです。このようにAIを使いこなしたりIT機器が溢れている世界になっても、人が自分の頭で考え、覚え、自分のものとして取り込んで、そして発信し、行動してゆくにはある程度の時間が必要なのです。その単位が3分間、3時間、3日、3月、3年、30年だと思うのです。以前書かせていただいた伊勢神宮の遷宮は20年に一度行われます。社を建てたり、木を育てたり自然の力と人の技の受け継ぎには20年スパンで継代してゆく必要があるという1000年の日本人の教えです。(10年は引き継ぎ期間です)
例えば瞑想は30秒では意味がなく、1日に3分間できれば素晴らしいと思います。ダイエットとか運動とか3日間続ければ、習慣となってきます。そしてそれが3ヶ月になれば、私は3ヶ月で10kgの減量に成功したこともあります(その時はみなさんに病気になったかと思われました。残念ながら現在はリバウンドをしっかりしてしまってますが、、)。でも今でも3ヶ月頑張れば体重は減ぜられると信じています。論文も実は3ヶ月集中すれば立派なものができます。私の唯一の代表作であるUCAS JAPAN(未破裂脳動脈瘤の経過観察の研究)の論文は3ヶ月で書き上げ投稿まで至ったものです。
AIを駆使している人たちは3日(3時間?)くらいで立派な論文を作り上げるのかもしれませんが、実際にはその文章の中に人の一生懸命な思考が含まれていない、中身の薄い論文になってしまっているのではないかと思います。現在医学論文の世界には先ほどの近畿大学の先生や私にきついことを言った友人もAIを駆使して論文を書きまくっています。それは良いことではありますが、数の自己満足に陥ってはいないかと、、やっかみ半分に思っています。高いインパクトファクター(論文の価値?と雑誌単位で表示したもので、雑誌の位を決める要素の一つです)の論文になったとしても、本当に読者のためのデータになっているのか、むしろ他のAIのための情報(AIはなんでもかんでも勉強して取り入れます)に過ぎないのではないかとも考えてしまいます。先に触れた日本医学会の医学雑誌編集者会議では、AIが査読すれば、瞬時にその論文の価値や過ち、修正すべき点が提案されるそうです。ただまだ未発表の論文をAIに読ませるとそこですでに新しい情報ではなくなるという問題が発生するので、自己学習はしないAI設定にするなどの問題があり、また同じ論文の査読を数名の査読者にいらしたところ、明らかにAIを使用したらしく指摘事項や査読結果がほぼ同じ内容だったという笑い話のようなこともあるそうです。
そうなると本当に科学の世界に新しい発想や意見は出てくるのでしょうか?
またAIの危険性は人間が考える力や記憶する力を失うだけではなく、頼り切ってしまうと誤った情報を信じてしまい大きな誤解と過ちが起きる可能性があるということです。身近では、先の選挙や戦争、石油に関する誤情報が山ほど出ているのが良い例です。
では、私たちはどうすれば良いでしょうか?
人が物事の決定や策定の中心にあるべきということを実現するために、まずAIに頼んだり聞く前に、自分でまずは考えてみる。書いてみる。文章を書くこと。そのためにはこのようなブログもありでしょうが、一日3行日記も有効だと思っています。3行なんて、すぐ。と思われるかもしれませんが、実は毎日つけるのは並大抵ではないのです。数日忘れてしまうと、はて、3日前には何をしたか?それこそ自分の手帳(電子)を見ないと思い出せないなどという自分がいます。それとその日に撮った写真も添付するようにしています。するとその日のことがありありと思い出されます。それに加えて考えたことをメモっておくこと。なかなか今は紙の手帳を持ってペンをぺろぺろして書いている人など見かけませんが、紙でも電子でも良いので、一言を書いておくことです。それとすごく大事なのは友達や家族と直に話をする時間を設けること。前回書きましたが、SNSやスマホは食事中は禁止、寝る前も禁止とするのが最適かと思います。最後に時間を大切にすること。AIは時間という概念を持っていないかもしれません。
一日3分間瞑想する時間を持ちましょう。瞑想し、しっかりと7時間眠ること。それが疲れやすい脳を休める秘訣かと思います。最近はBakuneとかもっと廉価なNITORIやUNIQLOでのストレス解消スエットなどが売りになされています。こういう何か実物的なもので休みを有効にするのも一つの手ではないかと思います。
AIを活用しない手はありません。今更我々に電気を使うな、と同じくらい、「AIを使うな」は難しい。電気が我々の体力を衰えさせたかというと、そうでもないように思います。脳の活用も同じようにAI頼りだけではなく、AIもアナログも上手く使いこなせるようしっかり自分たちの意識を持ち続けることが大事だと思うのです。
雑談:
先日松本を旅してきました。松本はアルプスからの雪解け水が地下を流れていて美味しい水が街の至るところに公共水道として供給されています。街からは北アルプスや八ヶ岳連峰の山々を眺めることができます。もちろん山の好きな人たちは駒ヶ岳、穂高や槍ヶ岳に登る足場とするのだと思います。私はそんな命懸けの登山はできないので、美ヶ原から北アルプスや富士山を眺めることで満足しようと思っています。ただ王ヶ頭(美ヶ原)では私は運に見放されていて、霧(雲)に出会ってばかりなのです。今回もどうも雲模様で、日没の直前から厚い雲に全体が覆われ、太陽も、星も、夜明けも見ることができず、霧の中でした。諦めていたところ、松本への送迎のバスの出る30分前になって、突然霧が晴れ、北から南まで一望にできるようになったのです。素晴らしい景色でした。青紫に輝く北アルプスの山々は素晴らしかったです。やる気を出すには最高ですね。
もう一つ。ワールドベースボールクラッシックは日本は予選では楽々一位通過でしたが、残念ながらベネズエラに負けてしまいました。色々原因があると思いますが、絶対に個人の責任ではないと思います。ネットでは米国も韓国も日本も特定の成績に悪かった選手を誹謗中傷するようなコメントが多いことをおもしろおかしく掻き立てていますが、不愉快になりますね。ベネズエラが米国に突然攻撃された後に優勝まで勝ちとったことを褒める記事の方がずっと有意義だと思うのです。
こんな現実の世界のことに一喜一憂するのも、たった30分という時間だけで気持ちが変わるのも、人間にしかできないことなのだと思うのです。
写真集
大森第一中学校での講演の様子
脳は弱いので、お豆腐のように水に浮かんでいる。だからヘルメットをしよう!
脳をフル回転させるには、休ませること。体調万全であること。そのためにしっかり7時間寝ること。







