余生とはいつからをいう蝉時雨

 

余生とはいつからをいう蝉時雨

森田明夫

 

先日NHKラジオ深夜便で、薮光生さんという全国和菓子協会の専務理事の方を交えての「わたし終(じま)いの極意(和菓子で心の栄養を)」と題した番組があった。私は元々甘いものをそんなに食べないので、「和菓子か〜〜〜」という気持ちで半分寝ながら(朝4時台の番組なので)聞いていたのだが、内容がすごくてどんどん目が覚めてきてしまった。もしこの話をもう一度聞けるのであれば聞きたいくらいである。

薮さんは元々建築業界にいたが、会社が潰れてしまって、ゆっくりしようかと思っていたところ彼が以前書いた業界再建の文章が、和菓子協会の虎屋の社長さんたちの目に止まって、和菓子業界の再建を望まれ請われて今の役職についたとのことである。全く違う領域の再建を願われるのだからものすごく勉強したと思うが、本当に凄まじい行動力である。和菓子の原料である豆や砂糖のことの知識を突き詰め、毎日毎日餡を作って家族で食べたそうである。

薮さんの和菓子関係の書籍には豆や砂糖と日本、世界の食文化に関する知識も豊富に書かれている。豆が好きな人にはたまらない。

 

さて番組の内容であるが、非常にうとうとと聞いていたので断片的なのはご容赦いただきたい。

まず年齢が80歳越えであるが、声の張りと話の内容がすごい。日々努力しているんだろうな、、という感じだ。

建築業界から和菓子の業界のトップの上り詰めるのに、何が大切だったかというと、「いつも興味を失わないこと」と「なぜを繰り返すこと」だそうである。なぜそうする、なぜそこでこうする、、、と質問攻めにする。和菓子の専門家の説明でも彼は質問攻めにするので、「薮さんの質問は後にして」 とよく言われたそうである。

私ども業界の手術に関しても、今までは「見て盗め」と言われていたが、何故そうするのか?を質問することが、技の知識化の重要とされる。先日聞いた学会発表で神戸大学の先生が専攻医の先生に全ての手術で3つの質問を考えておくようにしていて、手術後にそのことを復習しているそうである。AAR(アフターアクションレビュー)という目標を達成するための改善法だそうである。何故をもつことが脳神経外科の手術を学ぶ上での重要だということである。薮さんはそれを昔から自分で実行して和菓子についての本を何冊も著すくらいの知識を得たということである。

人間の能力は計り知れない、努力をすればするだけ進歩するということを体現してきた。何か新しいことを成し遂げたいのであれば、毎朝30分早めに起きて、できるようになるまで、続ける。ということ。餡を作るのも、何かを勉強するのも毎朝30分早起きしてやっていたそうである。常に一生懸命な姿勢を崩さないということが大事とのことである。

 

さて話の主題であった終活についてであるが、薮さんの終活は、65歳を過ぎた日から、週末の土日は全て奥さんに捧げた?そうである。それまでは自分が彼女を振り回していたので、65歳以後は奥さんがしたいということを毎週末しているそうである。絶対服従だそうである。奥様が行きたいところについてゆき、したいことを一緒にする。奥様は「今が一番幸せ」と言っているそうである。

そんな生き方もあるな。と思う。なかなか安月給の自分達にはあまりできることではなくて、まだ週末はバイトがてらの業務や学会などに顔を出している自分からはなんとも、羨ましいというか、できないな〜〜と思うが、75歳以降はそうするか、その頃は歩けなくなってしまっているか?などつらつら考える。

なかなか薮さんの言葉や考えについては和菓子専門の本以外に良い資料が見つからなかったのだが、ホームページを渉猟していたら、豆・豆料理探求家の五木のどかさんという人の書いたインタビュー記事を見つけた。薮さんの考え方や人生についてもう少しまともな情報が欲しい方はこの記事を読まれると良いと思う。

全国和菓子協会薮光生専務理事を訪ねて

その記事に次のような言葉があった。“薮さんは「知行合一」という言葉を大切にしているそうである。「知れば必ず行う、知ることと行うことは必ず一緒に進み、行わざるは真に知らざるものである。知は理想であり、行は実現である」。「なるほどと思ったら、まず実行。すると良い結果が生まれ、失敗してもそこから何かを学ぶ。その学びをさらに実行すれば、必ず良い結果がでる」という陽明学に基づく教え。”だそうである。

 

そして上記のラジオ番組の最後にアナウンサーが薮さんの終活についての言葉を問われて出したのが、このブログのタイトルである。「余生とはいつからをいう 蝉時雨」

 

この年になると、人生は拡大路線ではなくだんだん縮小路線に入ってくる。いつまでも若い気であれば、新しい知識や技を身につけられるし、人間には努力によって限界はないんだ!という本当に元気が出る番組でした。毎朝30分早起きして!なんて思いましが、実行できたのは3日坊主でした。意思が弱い。

もし本番組の再放送があったら皆さんも聞いて欲しいと思います。深夜・早朝ではなく普通の時間帯に流して欲しいですね。

 

ちょっと今は色々なことに限界を感じながら毎日を過ごしているので、少し元気になった時間・お話の紹介でした。

 

文京区千駄木・日本医科大学の隣にある一路庵。2月から前の年に塩漬けした桜の葉っぱがあるときだけ供される桜餅と、同じ時期に出される草餅。どちらも非常に美味しくて、毎回あるときは買って帰ります。
 

 

 

雑談:

6月には週末を利用して、以前感動した奥入瀬の奥にある蔦温泉の脇にある蔦沼を訪れました。早朝6時半ごろに沼に行くと、し〜〜〜んとした湖面に赤倉岳という山が映り、ものすごくぶなの新緑が綺麗です。微かになく小鳥の声に囲まれて、自然の中にたった一人という感じです。昨今の熊出没情報が怖かったのですが、熊に引っかかれることなく戻ってきました。そういうたった20分くらいの時間でも生まれ変われる気がしますね。

できたら紅葉の季節にも行ってみたいですが、ものすごく混むようです。

青森編でした。

ついでですが、中学生の頃から行きたかったのですが、かなっていなかった中尊寺の金色堂も観てきました。昔奥州で産出する金で奥州藤原氏が建てられたのですから、金の価値って昔もすごかったんだなと思います。頼朝の頃の作られた素晴らしい芸術品が現存しています。日本ってものすごいなと思います。

 


 蔦温泉の近くにある蔦沼。湖面に映る赤倉岳。6月はものすごい緑です。

 

中尊寺金色堂覆い堂です。中に とても綺麗な御堂があります。

 

 

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